女性に見られる頻尿や尿失禁などの排尿に関わる異常や膀胱炎などを扱う科です。
特に頻尿や尿失禁に関しては、恥ずかしくてどこに相談して良いのかが分からない患者さんが多くおられます。しかし、実際には、40歳以上の女性の3人に1人は程度の差はありますが、尿失禁が見られるとの報告があります。このことから、決して少ない病気ではなく、むしろ誰もがかかる可能性のある病気として、認識していただきたいと思います。
また、頻尿に関しても、排尿習慣に問題がある場合や過活動膀胱や間質性膀胱炎、膀胱癌などの病気が隠れている場合があります。
当院では、女性待合を完備しておりますので、1人で悩まずに気軽に受診して下さい
膀胱の容量は普通200~300ccです。約150ccたまると軽い尿意を、300cc前後たまると通常の尿意を感じるようになります。個人差がありますが、平均的な尿回数は、昼間は4~5回、夜間は0~2回前後です。一日平均1,000~2,000ccの尿量がありますが、水を多量に飲めばそれほど尿の量も回数も増えて行きます。さらに老人になれば、腎臓の尿を濃くする力(尿濃縮力)が低下するので尿の回数は多くなりがちで、特に夜間に尿に行く回数が増えて行きます。夜間に1~2回小便に起きるのは異常とは言えません。
いろいろな原因で尿の回数が増えてきた状態を頻尿といいますが、昼間に8回以上、夜間睡眠時に3回以上、合計で一日8~10回以上トイレに行く時は頻尿といえるでしょう。
頻尿は昼間や夜間を通して起こるのが普通ですが、昼間だけ起こる場合や夜間だけ起こり昼間は普通の場合がしばしばあります。
頻尿の起こる原因としては膀胱や腎など泌尿器系の臓器に病気が存在して起こるものと、特に原因がなく起こる頻尿とに区別できます。
尿の回数が多くなる時に、他の自覚症状を伴うかどうかが原因の手がかりになることがあります。例えば膀胱炎では排尿時の痛みや不快感、残尿感を伴うようになります。また膀胱炎や尿道炎では尿の検査で赤血球や白血球、細菌などが認められます。このように尿の性質の変化から診断できるものは、診断も比較的容易です。
尿の回数だけでなく、1回の尿量も異常に増えている場合は多尿と呼ばれ、尿崩症や糖尿病、慢性腎不全などが疑われます。
最も多いのは尿の回数は増えているものの、他の自覚症状はなく、尿量も何回もトイレに行くためにほとんど出ないか、出てもごく少量の場合です。この場合、膀胱癌や間質性膀胱炎で膀胱用量が減少、子宮筋腫や卵巣腫瘍など膀胱周囲の臓器の異常により膀胱が圧迫された可能性を考える必要があります。
検査、超音波検査、尿流量測定などで診断し、自律神経の調整薬などで治療します。
女性に見られる尿漏れの原因の一つです。
おなかに力が入った時に尿漏れしてしまう病気です。過活動膀胱による切迫性尿失禁と骨盤底筋の衰えによる腹圧性尿失禁の両方の症状が見られる方もいます。女性の正常な身体では、おなかに強い力(腹圧)がかかった場合、「骨盤底筋」という筋肉が膀胱と尿道を支えることで、尿道が締まり、尿が漏れるのを防いでいます。腹圧性尿失禁(尿漏れ)は、この骨盤底筋が弱くなったり傷んだりすることによって、尿道をうまく締められなくなり、尿漏れを起こす病気です。過活動膀胱による切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁の両方の症状が見られる方もいます。
次のような強い腹圧がかかるような動作をした時、尿が漏れてしまいます。
骨盤底筋が弱くなったり傷んだりする原因の最も大きなものは、出産と言われています。難産で骨盤底筋やその周りへの負担が長時間続いた場合や、多産で損傷の修復が間に合わないような場合は特にその危険性が高まります。また、加齢や、血液中の女性ホルモン濃度の低下、肥満などが、骨盤底筋の傷みの原因となります。
問診や検査によって診断します。パッドテストやストレステストを行うこともあります。
腹圧性尿失禁の治療の中心は、「骨盤底筋体操」です。緩んでしまった骨盤底筋を鍛えて、臓器が下がるのを防ぎ、尿道や肛門を締める力やコントロールする力をつけることで、尿漏れを防ぐ方法です。
薬による治療では、尿道を引き締めるはたらきがある薬(β受容体刺激薬)などを用います。手術には、尿道を吊り上げる方法(尿道スリング手術)や、コラーゲンを注入して尿道の筋肉を強くする方法などがあります。
なった時には少なからずショックを受ける膀胱炎。トイレに行くのが憂鬱になってしまいます。もちろん病院に行かなければ行けませんが、ある程度自分で『膀胱炎』だということが、しっかりと自覚できてしまうので、気持ちは一気にブルーになってしまいます。病院に行くと、あっという間に症状がなくなりますので、躊躇しないで病院に足を運びましょう。
前の項を見てお分かりのように、膀胱炎は放っておくと、どんどん症状が重くなっていきます。早めに気づいて病院に行かなければ、痛みが出てきて辛い思いをしてしまいます。婦人科で、下着を取って内診するわけではないのですから、早めに行くとそれだけ早く直ります。重い腰を上げて病院に行きましょう。
膀胱炎は男性よりも女性に多いものです。男性がならないわけではないのですが、圧倒的に女性に多く、女性の専売特許のような感もあります。どうして膀胱炎=女性みたいになっているのでしょうか。膀胱炎は、女性にとって珍しい病気ではなくなっていますが、膀胱炎を放っておくと慢性化してしまいますし、腎臓などにも障害が出る場合がありますので、その都度しっかりと治療しなければいけません。
間質性膀胱炎は20歳から60歳代の女性に多く、症状には頻尿や尿意の切迫感、膀胱に尿がたまる時に痛みや不快感などが生じることが多く見られます。このような症状が進行してゆくと痛みが強くなり、膀胱の容量も減少してゆくので頻尿が更に悪化して行きます。
原因としては諸説ありまだ明確にはなっていませんが、慢性に進行する炎症性の疾患であることがわかっています。
診断としては自覚症状や排尿の状態の評価・膀胱の内視鏡などを用いて診断を行います。
膀胱炎の予防は、清潔にすることと水分補給、疲れをそのままにしないことが一番肝心なことです。局所を不潔にしていると細菌も増えやすくなりますので、清潔を心がけましょう。
特に、生理用ナプキンやおりものシートは、こまめに交換するようにしなければいけません。性行為のあとも、トイレに行って排尿し、雑菌を流すようにしましょう。『膀胱に、菌を入れない・増やさない・免疫力を落とさない』ということを頭に入れておきましょう。
過活動膀胱は「急に我慢できないような尿意が起こる」「トイレが近い」「急にトイレに行きたくなり、我慢ができず尿が漏れてしまうことがある」などの症状を示す病気です。最近の調査で、とても多くの方がこの病気で悩んでいらっしゃることがわかりました。
過活動膀胱には、脳と膀胱(尿道)を結ぶ神経のトラブルで起こる「神経因性」のものと、それ以外の原因で起こる「非神経因性」のものがあります。
1.神経因性過活動膀胱(神経のトラブルが原因)
脳卒中や脳梗塞などの脳血管障害、パーキンソン病などの脳の障害、脊髄損傷や多発性硬化症などの脊髄の障害の後遺症により、脳と膀胱(尿道)の筋肉を結ぶ神経の回路に障害が起きると、「膀胱に尿がたまったよ」「まだ出してはいけないよ」「もう出していいよ」「膀胱を緩めるよ(締めるよ)」「尿道を締めるよ(緩めるよ)」といった信号のやりとりが正常にはたらかなくなります。その結果、膀胱に尿が少ししかたまっていなくても尿を出そうとしたり、「締める」「緩める」の連携がうまくはたらかなかったりして、過活動膀胱の症状が出るのです。
2.非神経因性過活動膀胱(神経のトラブルとは関係ない原因)骨盤底筋のトラブル
女性の場合、加齢や出産によって、膀胱・子宮・尿道などを支えている骨盤底筋が弱くなったり傷んだりすることがあります。そのために排尿のメカニズムがうまくはたらかなくなり、過活動膀胱が起こります。
3.それ以外の原因
上記以外の何らかの原因で膀胱の神経が過敏にはたらいてしまう場合や、原因が特定できない場合もあります。いくつかの原因が複雑にからみあっていると考えられています。この原因の特定できないものや加齢によるものが、実際には最も多く存在しています。
排尿に関係した症状などで日常生活に支障がある場合、まず医療機関を受診しましょう。
一般的に初診時に行われるのは問診です。どんな症状で困っているのかを具体的に伝えましょう。過活動膀胱かどうかを調べるための過活動膀胱スクリーニング質問票(リンク)や、過活動膀胱の症状の程度を調べるための過活動膀胱症状質問票(OABSS)という簡単な質問票があります。これらの質問票が診断のために使われることがあります。
問診以外には、膀胱の状態を調べるための検査を行うこともあります。排尿に関係した症状があるからといって、必ずしも過活動膀胱とは限りません。他の病気の可能性も含めて確認するための検査です。初診で行う検査は、主に、腹部エコー検査(残尿量の測定)、血液検査、尿検査などです。これらは比較的簡単な検査です。不安がらずに早めに医療機関を受診しましょう。
過活動膀胱の検査には他に、尿流測定、パッドテストやストレステストなどがあります。